魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~

 ドンドンドン!

 重く、乱暴な音が外から響いた。戸が、力任せに叩かれている。

「エルドさん! いるか!」

 聞こえたのは、切羽詰まった男の声。
 空気が一瞬で張り詰める。
 リンコの羽音がぴたりと止み、パッロも起き上がって身構える。

 エルドが無言のまま立ち上がり、戸を開けると、息を切らせた男がなだれ込むように飛び込んできた。
 顔は蒼白。目は血走り、額には冷や汗がにじんでいる。

「た、大変だ! 村で……村でおかしなことが起きてる!」

「落ち着け。なにがあった」

「でっかい蜘蛛の巣だ! 人の背丈よりでかい蜘蛛の巣が、道をふさいでる! まるで壁みたいに張られてて……通れねえ! 獣も何頭か絡まって動けなくなった!」

(蜘蛛……糸……)

 リュミの胸がドキリと跳ねる。
 忘れられない光景が、まざまざと脳裏に蘇る。

「まさか……この前の……!」

 森で見つけた、異様に太い蜘蛛の糸。
 まるで鋼のように強靱で、素手ではとても断ち切れなかった。

 その中に、小さなリスが絡め取られていた。
 リュミは必死に助けようとしたけれど、どうしても届かなくて――。

 その無力感は、今も胸の奥に刺さったまま。
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