石楠花の恋路
「えっ、ああ……きっかけ、ですか……それは」
幸枝は何と答えるべきか、口籠もっている。思い出してみれば、正博との出会いは海軍との秘密裏の仕事である。きっと小野木は正博を含め長津家の一人一人をよく知っている。仮に正博がサラリーマンなり工員なりの軍人以外の何かの職を持っていたのであれば仕事で知り合ったと言えるし、また仮に社交界に入っていれば何かのパーティーでなんて言い訳を付けられるのだが、別荘の門番とはいえ口外無用の話をするわけにはいかない。初めはどんな風に出会ったかしら──幸枝は初めて正博に会った日の状況を思い出して話すことにした。
「……ある日、私はとある仕事で京橋に居ました。駅の近くを歩いていたときに、ふと軍人さんから声を掛けられてお茶でも飲まないかと言われましたので、私も丁度仕事の終わったところでしたから、ご一緒したんです。そこで色々とお話をして……気がついた頃には定期的に会う仲になっていました。こんなところでしょうか」
当たり障りのない説明をするのに一生懸命の幸枝には小野木がどのような反応を見せるのか想像が付かなかったが、門番は案外納得したようで、
「偶然の出会いからこうなるとは……驚くべき話ですね」
と何故か感心するような表情で頷いている。
「一番驚いているのは私ですよ」
小野木は実際驚嘆の声を漏らしていたが、内心では幸枝の腹の中を探っているのであった彼は幸枝の長年抱えている疑問の答を知っている。
幸枝は何と答えるべきか、口籠もっている。思い出してみれば、正博との出会いは海軍との秘密裏の仕事である。きっと小野木は正博を含め長津家の一人一人をよく知っている。仮に正博がサラリーマンなり工員なりの軍人以外の何かの職を持っていたのであれば仕事で知り合ったと言えるし、また仮に社交界に入っていれば何かのパーティーでなんて言い訳を付けられるのだが、別荘の門番とはいえ口外無用の話をするわけにはいかない。初めはどんな風に出会ったかしら──幸枝は初めて正博に会った日の状況を思い出して話すことにした。
「……ある日、私はとある仕事で京橋に居ました。駅の近くを歩いていたときに、ふと軍人さんから声を掛けられてお茶でも飲まないかと言われましたので、私も丁度仕事の終わったところでしたから、ご一緒したんです。そこで色々とお話をして……気がついた頃には定期的に会う仲になっていました。こんなところでしょうか」
当たり障りのない説明をするのに一生懸命の幸枝には小野木がどのような反応を見せるのか想像が付かなかったが、門番は案外納得したようで、
「偶然の出会いからこうなるとは……驚くべき話ですね」
と何故か感心するような表情で頷いている。
「一番驚いているのは私ですよ」
小野木は実際驚嘆の声を漏らしていたが、内心では幸枝の腹の中を探っているのであった彼は幸枝の長年抱えている疑問の答を知っている。