百花繚乱
只事ではない表情に、私と紳太郎様は、急いで風音様の部屋へ、向かったのですが………

「紳太郎…」

既に倫太郎様はいらっしゃっていて、風音様の小さな手を握っておいででした。

「たった今…逝ってしまった……」

紳太郎様は、その場に崩れ落ちてしまって、這いながら風音様の枕元へ。

「風音……風音!!」

何度も風音様の身体を揺らして、終いには、その亡骸にすがっておいででした。


そして、その後。

部屋に戻った紳太郎様が一言。

「深雪。」

「はい。」

「俺は、医者になりたくない。」

あんなに立派な医者になると、仰っていた紳太郎様が、そんな言葉を口にされるなんて。

「紳太郎様?」

「風音は結局、死んでしまったじゃないか。」


生きとし生ける者、全て死ぬ時が来る。

風音様は、人よりもその時が早かっただけ。

そう分かっていても、紳太郎様にかけて差し上げる言葉も見つからず、私はただ俯いて、あの方のお側にいるだけでした。

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