百花繚乱
珍しいお菓子をもらってきたと言っては、風音様へ持って行ってあげる、そんなおお優しいお兄様でしたね。


ああ、お二人に妹様がいらっしゃったのを、初めて聞きましたか?

あまり知られていないことですからね。

特別な事情というほどでもないのですが、妹の風音様は看病の甲斐もなく、幼い頃にお亡くなりになってしまったんです。


それはある雪の日、いつものように、紳太郎様が帰ってらっしゃった時でした。

「ただいま帰ったよ、深雪。」

「お帰りなさいませ。」

「何か変わった事は?」

鞄を置きながら、そう私に聞くのが、紳太郎様の口癖でした。


「特に変わったことは……」

私がそう言おうとした時でした。

「失礼します!」

風音様についている家政婦の一人が、急いでやってきたんです。

「どうしたのです?」

私が尋ねると、その家政婦の体は、震えていました。


「紳太郎様、早く……早く、風音様の元へ……」

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