急行列車が過ぎた後で
高校を卒業するまで、ずっとダンスを続けてきた。
3歳から18歳まで、地元の有名なスクールに通い、
中学と高校ではダンス部に所属して、毎日ひたすら踊る日々。
周りからは「うまいね」って言われ続けて、
将来はきっとダンスに関わる仕事に就くんだろう、そう信じていた。
楽しかった。
本当に、楽しかったんだ。

本当は、気づいていたんだと思う。
それでも、まだ間に合うって、自分に言い聞かせていた。
18歳、高校生活最後の大会。
遅すぎるくらいだったけれど、私はようやく現実を見た。
「楽しいだけじゃ、やっていけない」
あの時、私はズタボロになった。

18年間、ダンスしかしてこなかった私が。

大学では、もうダンスサークルには入らなかった。
一度、自分の限界を知ってしまったから。

その代わりに、空いた時間でアルバイトを始めた。
バイトは初めての経験だったけど、
元々要領がよかったのと、部活で培った上下関係スキルのおかげか、苦労することはほとんどなかった。
先輩からも後輩からも頼られる存在になれてると思う(たぶん、だけど)。
バイト先は、いつの間にか私にとって大好きな場所になっていた。

学校では、とりあえず資格を取ろうと、教育の道を選んだ。
一応、小学校の先生になろうと思ってる。
二年間のうちに単位を一つも落としてないから、この調子でいけば何とかなるかな。
実習はすごく大変だけど、まあ学費を払ってくれてるのは親だし、頑張らないと。
残念だけど、来年はもっと忙しくなるらしい。
…今の大好きなバイトも、もしかしたら辞めなきゃいけないのかもしれない。

 

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