さっちゃんの足跡

24. お雑煮。

 正月と言えばお雑煮。 鶏の出汁だったりトビウオの出汁だったり昆布出汁だったりして地域によって味も中身も違う不思議な料理です。
 「うちは本出汁よね。 お父さん?」 「そうだっけ? 母さんは昆布から出汁を取ってたぞ。」
「実家は実家。 私は私だから。」 そう言ってママは本出汁を鍋に投入。
 鶏肉とか大根とか白菜とかたっぷりと入れて煮込んでいきます。
煮えてきたら少し灰汁を取りまして味醂と醤油で味付けを決めまして最後にお餅を入れます。
 焼かないで入れる人も居るんだけどちょっとは焦がしたほうが美味しいかも。
そう思ってママはコンロに網を載せてちょっとだけ焼いてから入れます。
 「今年も我が家に正月が来たわよ。」 「何処の家だってそうだろう?」
「水を差さないの。 せっかく盛り上がろうとしてるんだから。」 「ごめんごめん。」
 「さあて、さっちゃんもお雑煮よ。」 「はーい。」
「さっちゃんはいつも素直でいいなあ。」 「そう?」
「どっかの誰かさんとは大きな違いよねえ?」 「誰かって誰だよ?」
「さあねえ。 10時過ぎたのにジャージでウロウロしている孝則とかって男の人。」 「もしかして俺か?」
「そこから先は言いませんわ。 面倒だから。」 「年の初めに意地悪だなあ。」
「あ、な、た、も、ね。」 「はいはい。」
 年の初め、最近ではテレビを見ることもすっかり珍しくなってYouTubeでおめでたい動画は無いかと探し回る日々。
 それでも時には懐かしい寅さんの映画を見付けたりしてほっこり。
 お餅も自分で突かなくなってどれくらいになるだろう? お店で買ってくるばかり。
袋いっぱいに詰め込まれたお餅を買ってきて「焼いて食べようか。」って三人で食べてます。
 昔のストーブなら上に載せて焼けたのに今のはファンヒーターだから載せることも出来ません。
 それでしょうがなくレンジに入れてチン!するわけね。
なんか侘しくなったなあ。 ストーブの上で膨れっ面をしているお餅を見たい。
 油断するとパーンって弾けるんだよね。 弾ける前に取るのがコツ。
でもさあ、お雑煮に入れるお餅って地方によって丸だったり視覚だったりするのよね? 見てると面白い。
友達が「何でここのは丸井の?」って聞いてきたから「昔からよ。」って答えたら「ふーん、そうなんだ。」って言ってた。
 お節料理も昔はたーーーーーーっくさん作ったわよねえ。 今はお店で買ってくるけど。
 昆布巻きも栗金団もお煮しめもみんなみんな味が違って美味しかったわ。
何で作ってたか知ってる? お母さんたちが正月の間だけでも休めるようにって心遣いから生まれたのよ お節料理って。
そういう風物詩は残したいわねえ。

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