あの日に置いてきた恋をもう一度あなたと
 それでも菜月は、そんな姿をほほ笑ましく思ってしまう。

 くすりと肩を揺らした菜月は、そっと笠井の顔を下から覗き込んだ。

「恋人はいません。今は仕事が恋人です」

 にっこりとほほ笑む菜月に、笠井は同僚と顔を見合わせると、ぐっとガッツポーズを見せる。

「ありがとーございましたー!」

 笠井は最敬礼するように頭を下げると、そのまま奥のテーブルへと駆けて行った。

(なんだか、若いって可愛いなぁ)

 同僚と歓喜の雄叫びを上げている笠井をぼんやりと見ていると、同じテーブルに腰かけていた宮本が菜月に顔を向ける。


「ねぇねぇ。綾瀬さんって、佐々波リーダーと同級生だったんでしょう?」

 親し気に話しかける宮本に、菜月は小さくうなずいた。

「そうなんです。最初に顔を見た時は、本当にびっくりしました」

 菜月の返事に、宮本は「ふーん」と意味深な顔つきをすると、今度は椅子ごとグイっと菜月の側に寄った。

「もしかしてさぁ。二人って、高校時代に何かあったとか?」

 急に声を潜めた宮本に、菜月は途端にギクリと身体を揺らす。
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