あの日に置いてきた恋をもう一度あなたと
「そう言えば昔、凌平が今みたいに、私の頭を撫でてくれたことがあったの。覚えてる?」

 凌平は菜月の頭に乗せていた手を机に置くと、にっこりとほほ笑む。

「もちろん、覚えてるよ。あの頃、綾瀬は進路のことで悩んでた」

「そうだね。でも凌平が今みたいに優しく励ましてくれて、私は前に進むことができた。今の私がいるのは、きっと凌平のおかげだね」

 おどけたように言った菜月が見上げると、凌平は何かを考えるようにじっと目線を机に落としている。

 二人きりの深夜のオフィスには、パソコンのファンの音が、やけに大きく耳に響いた。

「凌平?」

 菜月が戸惑ったように首を傾げると、凌平は机に置いた手をキュッと握り締める。

 しばらくして、凌平は急に真剣な瞳を菜月に向けた。


「なぁ、俺たち付き合わないか?」

「……え?」

 唐突に切り出された言葉に、菜月は目を見開くとはっと息を止める。

 言われた言葉の意味が、うまく頭の中で処理できない。
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