御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
神楽木さんが、静かに問いかけてくる。

目をそらすことなく、まっすぐに。

「……はい。確かに。」

もう誰かに振り回されるのも、期待して傷つくのも、疲れた。

だから、素直にそう答えたはずだった。

「僕もそうなんです。」

神楽木さんはふっと笑みを浮かべた。

だけど、その声はどこか真摯で、少しだけ寂しそうにも聞こえた。

「どうせ恋愛をするなら、遠回りせずに──“結婚した相手”と恋をしたい。」

──遠回りしない恋。

それは確かに理想かもしれない。でも。

「……でも」

ここではい、結婚します──なんて、言えるはずがない。

「少し……お時間をいただけないでしょうか。」

ようやく絞り出すように口にした私の言葉に、神楽木さんはふっと穏やかに笑んだ。

「前向きに検討いただけるということでしょうか。」

──うっ。
また、そうやって真っ直ぐにくる。
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