御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
まだ、この人と付き合うかどうかも分からない。

ましてや“結婚”なんて──今すぐ返事を出せるわけがない。

「……それも含めて、検討させてください。」

私は営業マンとして、何百という提案をしてきた。

即決してもらえたら、それはもちろん嬉しい。けれど。

客の立場に立てば──即決しない方がいい。

一度家に持ち帰って、冷静に、自分の気持ちと照らし合わせてから決めるべきだ。

そう、自分に言い聞かせるように、私は立ち上がった。

「今日は、ありがとうございました。」

「こちらこそ。」

神楽木さんは席を立ち、軽く会釈してくれた。

その柔らかな仕草に、最後まで“部長”の威圧感はなく、ただ一人の“大人の男性”としての余裕があった。

「外までお送りしましょう。」

そう言って、神楽木さんは部長室を出て私の隣を歩いた。

自分より少し背の高いその人の歩幅に、自然と足を合わせてしまっている自分がいた。

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