御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「……俺には、そんな物、必要ない。」

その言葉と同時に、私の肩を引き寄せる。

「この人が、俺の選んだ人だ。」

胸が、きゅんと締めつけられた。

こんなにも真っ直ぐに、誰かに“選ばれる”というのは、きっと一生に一度しかない。

「俺に必要なのは、千尋の“愛”だ。」

それは、ただの反論でも、拒絶でもなかった。

一つの真実として、はっきりと突きつけた愛の宣言だった。

涼花さんは黙っていたが、次の瞬間、ふっと背中を向けた。

「……私を断って、この先があると思うの?」

最後の牽制のようなその言葉に、律さんはもう迷わなかった。

私の手を握り、真っ直ぐな声で言う。

「君は、可哀想な人だな。」

「律⁉」と、涼花さんの声が鋭くなる。

だが律さんは一切振り返らず、私の手を引いたまま、玄関へと向かう。

「この先はーーー俺と千尋で作る。」

静かに、そして確かにドアが閉まり、ようやく――過去の亡霊に、終止符が打たれたのだった。
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