御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「それは事実だ。でもそれ以上に、今、千尋を愛してる。」

きっぱりとした律さんの言葉に、涼花さんの瞳が揺れる。

「君とは過去。千尋は、俺の未来なんだ。」

その瞬間、涼花さんの表情から全ての仮面が落ちた。

虚ろな目で私を見つめ、そして呟く。

「律、あなたは分かっていないのよ。」

涼花さんの声音は静かだったが、その奥にある自信と執着がにじんでいた。

リビングの空気が一瞬にして張りつめる。

「何を?」と、律さんが短く返す。

「あなたには、私が必要だわ。」

ぞわっと背筋に冷たいものが走った。

その声音は、“愛”ではなく“計算”を孕んでいる。

「石原グループのご令嬢が、神楽木フォールディングスの御曹司には、必要なのよ。」

上から見下ろすようなその言葉に、律さんはぴたりと動きを止め、ゆっくりと振り向いた。

その瞳は鋭く、冷たい決意をたたえていた。
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