御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
「――そんな男、泣くに値しない。」

「えっ……?」

一瞬で、涙が止まった。

律さんの目はまっすぐで、少しだけ怒っているようにも見えた。

「俺だったら……千尋の全部を引き受ける。何も捨てさせない。どれも、おまえの大事なものなんだろ?」

その言葉に、胸がぎゅっと苦しくなる。

「俺なら、全部抱きしめる。千尋の過去も、家族も、想いも――全部、愛したい。」

そう言って、律さんは私の手を取り、そしてそっと唇を重ねた。

やさしく、けれど、確かに想いのこもったキスだった。

「千尋。俺は、千尋の味方だよ。」

その一言が、心にじんわりと染みた。

「律さん……」

「今度、千尋を泣かせるような奴がいたら、俺が言ってやっつけてやる。」

ちょっと真剣な顔で、拳を握るその姿が頼もしすぎて。

まるで童話に出てくるナイトみたいで。

「可笑しい……律さん、面白過ぎ。」

思わず、くすくす笑ってしまった。

あんなに泣いていたのに、今はこんなにも温かくて。
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