御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
するとその瞬間──

「キャーッ!」「律部長〜!!」

エントランスの受付あたりから、女子社員たちの黄色い歓声が飛んだ。

え? と思って振り返ると、

神楽木さんは、まるで何事もなかったかのように笑顔を浮かべて、アイドルのように軽く手を振っていた。

──いや、なんでそんなに慣れてるの?

なんでそんなに爽やかに、自然に手を振れるの?

「ああいうところ、御曹司って感じ……」

思わず心の中でつぶやいたその瞬間、神楽木さんがふと私のほうを向き、片目だけでそっとウィンクをしてきた。

──やっぱり、この人、只者じゃない。

そう思いながら、私はその場をそそくさと後にした。

そして、エントランスを抜けた外の空気は、ほんの少しだけ、さっきより熱く感じた。

会社に戻ると、パソコンの前に座るなり、深いため息が漏れた。

「……どうしたんですか?朝倉さん、すっごい難しい顔してますよ?」
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