御曹司との交際0日婚なんて、聞いてません!──10年の恋に疲れた私が、突然プロポーズされました
そう思った、まさにそのとき。

「ところで、朝倉さん。」

ふと、声色が変わった。

緩やかな口調のまま、けれど真剣な眼差しで、彼が私を見つめる。

「ひとつ、個人的なお願いがあるのですが。」

──その“お願い”が、私の人生を大きく揺るがすことになるとは、このときの私はまだ知らなかった。

「はい。」

私は少し身を乗り出して返事をした。

もしかして、この後の時間を使って、さっそく案件の方向性を詰めるのかもしれない。

──初日でここまで順調に進むなんて。上出来だ。

けれど、次の一言があまりにも予想外すぎて、思考が止まった。

「恋人は、現在いらっしゃいますか?」

「……はい?」

思わず間の抜けた声が出てしまう。まさか、恋愛の話? 今、この場で?

困惑する私に、神楽木さんはいたずらっぽく、けれどどこか誠実な笑みを浮かべた。

「ちなみに僕はいません。」

──あ、先に言われた。
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