カンペキ王子は、少々独占欲強めです。
「なにしてんの?」

ぽつん、と落ち着いた声が廊下に響いた。

大浴場から部屋へ戻る途中、タオルを肩にかけた和樹が立ち止まった。
廊下の自販機前。水を選んでいた陸が、ゆっくり振り向く。

「……何が?」

淡々と返す陸の声に、和樹は少しだけ口元をゆがめた。

「いや、さ。
矢田といい感じだったって、福原がうるさくてさ。
“あの陸が、花乃と?”──って、ちょっと気になっただけ」

「……そっか」

陸はそれ以上何も言わず、水のボタンを押す。
がこん、と音がして、冷たいペットボトルが落ちてくる。

それを拾って、くるくるとキャップを回しながら、
陸はまっすぐに和樹の目を見た。

「……俺は別に、隠してるつもりないけど?」

「へえ」

「そっちは?」

「なにが」

「“花乃”って、呼び捨てにしてた。中学のときから?」

「……さあ」

会話は一見、穏やかで淡々としているのに──
火花が静かに散っていた。

どちらからともなく視線を外し、
すれ違うようにして、それぞれの部屋へ戻っていった。

残された廊下には、冷たいペットボトルの音だけが響いていた。
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