カンペキ王子は、少々独占欲強めです。
金曜日の放課後。
改札を出て数分、駅チカの静かな住宅街に、湯田中家はあった。

清潔感のある白い外壁に、整えられた植栽。
どこかモデルハウスのようで、花乃は思わず背筋を伸ばす。

(陸って、やっぱり……こういう家に住んでるんだ)

インターホンを鳴らすと、すぐに陸がドアを開けた。

「おつかれ。入って」

「お、おじゃまします……!」

靴を揃えて上がった玄関から、すでに心臓はドキドキ。
リビングの奥に入ると、ソファに座っていた男の子が顔を上げた。

「あ、いらっしゃい」

陸とそっくりな顔立ち──けれど、どこか雰囲気の違う彼が、花乃に向かって軽く頭を下げた。

「クラス違うからはじめましてかな」

「……あ、よろしくお願いします」

「ゆっくりしていって。わからないことあれば、教えるし」

蓮の声は低くて落ち着いていて、どこか距離を取っているような淡々とした口調。
でも不思議と、冷たくはなかった。

それどころか──心地よさすらある。

(……双子って、不思議)

同じ顔なのに、話し方も空気も、全然違う。

そんな花乃の様子をちらりと見て、陸が笑う。

「じゃ、勉強部屋こっち。今日は理数系中心な」

「う、うん……」

緊張したまま、陸のあとをついて階段を上がる。

ほんの数歩の距離なのに、なんだかやたらと意識してしまって、
花乃の手のひらは汗ばんでいた。

(勉強、ちゃんとできるかな……)

不安と期待が入り混じる、湯田中家での“補習”が、はじまった。
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