あの夏の夜の続きは今夜
電車がスローモーションのように目の前で止まりかけた時に、私はドアの中にその姿を見つけ、そして思わず目を逸らした。

浮島がいつもの通勤スタイルでそこに立っていたのに加え、近い距離ですぐ隣に立つ女と喋っているように見えたからだ。

反射的に私は顔を背け、10メートルほど歩いた先のベンチへと向かった。

顔を見合わせて笑い合っていた女の人がいた。

ただの知り合いなんだろうけど、それでも何だか見たくなかった。

同じ会社の人かもしれないけど、すごく楽しそうに笑ってて、私は嫉妬した。

職場に女の人いないって言ってたけど、あれは嘘だったのか。

私は私と一緒にいる時の浮島しか知らなくて、浮島が他の人とどんな話で盛り上がって笑うのかなんて知らない。

さっきの人の横顔を思い出す。

パッと見ただけで美人で、華やかで。

人をまたたくさん乗せた電車がホームを去る。

ほんのわずかな時間、ホームに一人になったような気分になる。

さっきのはやはり浮島だった。
胸が苦しい。

妬くなんて子どもっぽいな。

私は落ち着かなくてベンチに座っては立ち上がる。

深呼吸をするけど、肺はギュッと押しつぶされたように痛い。

苦しくて、またベンチに座った。

この歳で他の女に妬くなんて、重い。

また次の電車が入るアナウンスが響く。
私はこれに乗って早く帰ろう。

来た電車に私は体を押し込んだ。
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