悲劇のセイレーンにささやかな愛を
『この瞬間も、私たちはいつだって未来へと進んでるでしょ』
「あ……」
『今こうしてる時間だって、次の瞬間には過去になるんだから』
ああ、そうか。
一瞬で世界は変わる。
飛んでいる小鳥の位置も、吐き出された言葉も、聴こえる音でさえも、次の瞬間には変わっている。
「俺らはいつも、未来へタイムスリップしてるんだな」
そう言いながら澪の方を向くと、彼女は目を少し開いてから微笑んだ。
「ありがとな。澪は物知りだ」
『でしょ!バカじゃないんだからね』
「いや物知りのバカだ」
『何それ⁉︎』
笑い合いながら、強く強く、澪にはずっと側にいてほしいと思った。
そう感じた、静けさが残る帰路。
今日も俺らは、2人揃って家に帰る。