悲劇のセイレーンにささやかな愛を
確かに、3人を轢いたのは3つ隣の県からたまたま来ていた配送業者の男で、面識があるとも思えなかった。
黙ったままの俺に、その警察はまたため息をついた。
本当に飛び出したのなら、その運転手はもちろん警察だってとんだ迷惑なんだろう。
それにしたって、対応はあまりにも酷すぎた。
けど俺は何も言い返せなかった。
3人はその後1時間もしないうちに息を引き取った。
俺はしばらく無気力のまま日々を過ごし、気づけば葬儀も終わっていた。
結局運転手は過失致死で7年の懲役・80万の罰金で済んだ。
法的にも彼に悪意は全くなかったことが証明された。
それから数日経って、俺は気が狂ったように『普段通りの生活』を再開した。
ご飯はいつも決まって4人分作る。
出かける時は誰もいない空間に挨拶をする。
そしてリビングでその日の思い出を話す。
信じたくなかったんだ。
あの3人が死んだって、この世から何もかも消えたんだってことを。
だから毎日、仏壇なんて作り物だって言い聞かせたりして。
……あー、秋斗たちも奈月のことは知ってたよ。
中学校一緒だったしな。
ただ高校に入ってからは俺があまり奈月のことを話さなくなったのもあって、あまり気になってないらしい。
これが、俺の過去。