悲劇のセイレーンにささやかな愛を
「みんな準備はいい⁉︎」
「俺らはもう大丈夫だ、彩芽」
「こっちも完璧!いくよ、せーのっ」
シャッ、とカーテンが開いて、男女は1時間ぶりに顔を合わせた。
「っ……」
俺は思わず息を呑む。
もじもじと恥ずかしそうに立っていたのは、青地にピンクの花が散った浴衣に紫の帯を結び、鼻緒が水色の下駄を履いていた澪だった。
髪は右サイドに緩い編み込みをお団子にしていて、紫と白の花の飾りをつけていた。
手には白の巾着が入ったカゴバッグ。
肌にも薄く自然にメイクが施されていて、いつもより何倍も大人っぽかった。
「凰牙かっこいー!」
「……彩芽、一旦あっちに行こうか」
「へ?……わわっ」