本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
「あの、エデル様がお見えです」

 ち、と舌打ちしそうになったのを懸命にこらえた。今の自分のふるまいが、貴族令嬢らしからぬものであることぐらいわかっている。

 侍女の前で舌打ちなんてしてしまえば、陰で何を言われるかわかったものではない。使用人達の間で、フィノラが悪いなんて噂になるのでは困ってしまう。

「……エデル様がお見えなら、すぐに着替えなくてはね。ドレスを出してくださる?」

 今身に着けているのは、寛ぐためのもの。いくら婚約者とはいえ、異性の前に出るには緩すぎる格好だ。

 慌てて身なりを整え、客間へと入った時には、エデルは待ちくたびれた様子だった。

 そんなに待たせたつもりもないのに、何様のつもりだとまた心の中で苛立ちが募る。

 だが、それは見せないようにして、にっこりと微笑んだ。もしかしたら、エデルにもまだ利用価値があるかもしれない。

「エデル様、来てくださって嬉しいわ。本当よ?」

 自分でも愛らしいとわかっている笑みを浮かべると、エデルは明らかにほっとした顔になった。

(……本当、見劣りするわ)

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