本好き地味令嬢は、自由を満喫していますので。~今さら助けてくれと言われても、二度と家には戻りません!~
 手を伸ばし、一番近い棚から一冊の本を抜き出してみる。

(魔術陣入門書……?)

 まだ八歳だが、リティスはけっこう難しい書物も読めるのだ。

 今までの人生、寂しさを覚えた時にリティスを慰めてくれたのは、物語の登場人物や新たな知識だったから。

(……これ、すごいかも!)

 ページを開いてみれば、『魔術陣』を頭の中に描いて魔術を使う魔術について書かれている。こんな魔術、今まで見たことはない。

 別の本棚に駆け寄る。

 そこに置かれていたのは、古い物語の本。
 内容はリティスも知っている。今まで何度も読んだお姫様と騎士の物語だ。でも、ここに置かれている本は、挿絵に色鮮やかな彩色が施されている立派なものだ。

 魔術書の本を脇に置き、今度はそちらを手に取ってみる。身体を丸めるようにして、夢中になって読み始めた。

 こうして美しい挿絵がつくと、よく知っている物語でも、別の物語のように思えてくる。

 読もう。ここにある本をどんどん読もう。

 ここは、リティスにとって天国だ。

 ページを半分も読み進める頃には、リティスの頭の中から家族のことは消え失せていた。
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