危険男子たち、取り扱い注意。
“普通”じゃないけど、みんなとなら









冬休みに入って、最初の朝。
窓の外は、うっすらと霜がおりていて、空気まで凍ってるみたいだった。
あのにぎやかな体育祭から、時間は流れて、街はすっかり冬支度。

 

私は小さく伸びをして、ベッドから抜け出す。
今日は、大切な用事がある。





「……お姉ちゃんの通院の日だ」




カレンダーに小さく丸をつけていた日。
冬休みに入ったばかりの朝、私は少し早めに身支度を済ませる。


お姉ちゃんの通院に合わせて、私が付き添いに行く日。
ちょっとだけ早起きして、お弁当を多めに詰めて、マフラーを巻く。


バスに揺られながら、私は窓の外に流れる景色をぼんやりと眺めていた。
この坂道、前はお姉ちゃんと二人で通ったこともあったっけ。


お姉ちゃんは、昔から誰にでも好かれるタイプだった。
明るくて、強くて、笑顔がまぶしくて。
でも、妹の私は、いつもその背中を見上げてばかりで。

 

——“しおりちゃんって、お姉さんと全然ちがうね”

 

何気なく言われたその一言に、勝手に落ち込んだこともあった。
嫉妬しちゃうときもあった。


でも、それでも私は、お姉ちゃんのことが大好きだった。
大好きで、大切で、ちょっと憧れてた。


そんなお姉ちゃんが事故に遭ったのは、二年前の冬の夜。
“夜道で転んで車に巻き込まれた”って。
でも、何人かの人は、ひそひそと——





「夜に出歩いてたからじゃない?」

「誰かに追いかけられてたって噂、聞いたことある」

「ちょっと派手だったしね〜」





そんな、悪意のないふりをした言葉を投げてきた。
私はそのたびに、心の奥がじくじくと痛んだ。
“違うのに”って、何度も思って、何度も伝えて。


——でも、届かなかった。
信じてるのは私だけみたいで、余計に声が出なくなった。


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