愛のち晴れ 海上自衛官の一途愛が雨女を幸せにするまで
 



 航さんと出かける約束をしてから数日後。
 九月中旬のシーガーデンの定休日と航さんの休みがかぶった火曜日の今日に、私たちは港町のベイエリアに出かけることになった。
 目的はもちろん、重光さんの誕生日プレゼントを買うこと。だから今日は、おしゃれなお店が建ち並ぶ海沿いの街を歩きながら、いろいろ見てみようかとメッセージでは話していたのだけれど……。

「やっぱり雨かぁ」

 当日、晴れ予報だったはずが天気は荒天。
 待ち合わせをしていた駅の改札前で、私は空を見上げながら肩を落とした。
 家を出る前はまだ晴れていたから、今日は大丈夫かもしれないと少し期待したのだけれど、ダメだった。

「陽花、ごめん。待たせたか?」

 思わずため息をついたタイミングで、航さんが待ち合わせ場所に現れた。
 白のTシャツに黒いシャツを羽織り、ボトムスも黒のテーパードパンツという、今日もシンプルかつスマートな出で立ちだ。
「私も今来たばかりです」と答えると、航さんは「よかった」とつぶやいてから、何やら難しい顔をして空を見上げた。

「今日は一日快晴のはずなのに、雨が降るなんておかしいな」

 気象予報士の資格も持つ航さんは、予想外の雨を(いぶか)しんでいるようだった。

「気圧配置は安定してるはずなんだけどな……。局地的な対流雲か、予想しづらい湿舌(しつぜつ)の影響かな」
「しつ、ぜつ?」
「ああ。湿った舌って書く。空に湿度の高い空気が帯状に集まってる場所があって、そこが通ると雨が降りやすくなるんだ」

 航さんは真剣な表情で、雲の切れ間を指差した。

「もしも、局地的な対流雲のほうだとしたら──」

 ところがそこまで言いかけた彼は、「あっ」と目を見開いて言葉を止めた。
 そして気まずそうに前髪をかき上げてから、眉尻を下げる。

 
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