愛のち晴れ 海上自衛官の一途愛が雨女を幸せにするまで
 




 そろそろ秋の気配を感じ始める九月の終わり。航さんと重光さんの還暦祝いのプレゼントを買いに行ってから、約二週間が経った。
 今日もいつもどおりにシーガーデンで働いていたら、担当編集さんから電話がかかってきて……。
 ちょうど昼と夜の中休憩に入ったばかりだった私は、タイミングよく出ることができた。

《ネーム、拝見させていただきました。ふたりの距離感や行動に説得力が出てきて、すごくいいお話になっていると思います》
「えっ、本当ですか!?」

 思わず声が上ずった。電話越しの担当編集さんの声も、心なしか弾んでいたような気がする。

《この内容で、一度会議にかけたいと思います》

 続けてそう言われて、胸の奥が熱くなる。
 会議にかけるということは、他の編集さんや編集長の意見を聞いた上で、本原稿に入るかどうかを検討するという意味だ。

「ありがとうございますっ、嬉しいです!」

 まだデビューが決まったわけではない。それでもようやく一歩前進できたことは間違いないので、喜ばずにはいられなかった。

《こここにくるまで大変だったと思います。絶対に、いい作品にしましょう。アジサイさんにお声がけして、本当によかったです》

 力強い声。そんなふうに言われたのは初めてで、目頭がじんとした。
 心のどこかでは、またダメかもしれないという不安もあった。
 また、ボツになってしまうんじゃないか。
 自信をなくして、つい後ろ向きになってしまうこともあったけれど、諦めずにこられたのは担当編集さんのおかげだ。

 
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