愛のち晴れ 海上自衛官の一途愛が雨女を幸せにするまで
「ふ、ふふっ」
気がつくと私は、息をこぼすように笑っていた。
スマホのこともすごく気にしてくれているし、きっと真面目で誠実な人なんだろう。
ぶつかったのがこの人でよかった、なんて、そんなふうに思うのは、さすがに能天気すぎるかもしれないけれど。
「それじゃあ、失礼します。いろいろお気遣いいただき、どうもありがとうございました」
頭を下げた私は、今度こそ回れ右をした。
そのまま彼に背を向け、前を向いて歩きだす。
浜辺にいた高校生カップルは、いつの間にかいなくなっている。
海風に揺らされた私の長い髪だけが、彼のほうへと名残惜しげになびいていた。