フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
もちろん楓は覚えているが、相当酔っ払っていたのは事実だ。
 
飲んだのはウーロンハイ一杯だけど。

「覚えてないの?」

「……ええ、さっぱり」
 
すると彼は沈黙する。
 
うまくいった?と一瞬思うが、そうは問屋が卸さなかった。

「僕が女性の連絡先を捨てながら暴言を吐いているところを見たって言ってたよ」

「あ……そ、そうですか」
 
うやむやにしたいところをスパッと言われてしまい言葉に詰まる。
 
あまりにも潔いので、彼にとって都合の悪いことを話しているはずなのに、なんだかこちらが悪いことをしたような気分になってしまう。
 
とにかく伊東はこの件をうやむやにするつもりはないようだ。
 
そりゃそうか。
 
楓が、飲み会の件は忘れていてもゴミふ袋事件自体を覚えていたら彼にとっては意味がない。

「えーっと……」

「なんの話か詳しく聞かせてくれる?」
 
穏やかな問いかけが返って怖い。
 
怖すぎる。
 
心を落ち着けるために目の前のメロンクリームソーダのアイスをパクパク食べてマドラーをぐるぐる回す。
 
もう一刻も早く帰りたいので、よさげな言葉を口にする。

「あの、私、誰にも言いませんから……す、すみませんでした」
 
だからもう許してくださいと言う気分だった。
 
弱みを握ってるのはこっちのはずなのになんでこんなにビビらされなきゃなんないの。逆でしょ逆、とは思うけれど。

「じゃなくて」
 
伊東が苦笑した。

「なにを見たのかおしえてって言ってるんだけど。誰かに言う言わないの話じゃなくてさ。昨日のことは覚えてなくても、見た時はシラフだったでしょう? ゴミ袋にぎゅうぎゅうだっけ?」
 
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