フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
「ちょっと予定があって。そもそもメンバー的にもおかしくないかなって。男性は僕ひとりみたいだし浮いちゃいますよ」

「大丈夫だろ、王子なら」

「いえいえ。太田さんならどんな方の中にでも馴染めるのかなと思いますが」
 
彼は、倫のことを『王子、王子』と連呼するが、太田の会社の中での女性の人気は、倫と張るくらい高い。だから太田が行っても喜ばれるだろう。
 
かといって、張り合うつもりは微塵もないから、謙遜しつつ相手を立てると、太田は「ふふーん?」と笑った。

「そういえば王子は、女の子と飲んでるっていう話は聞かないな。そういうの苦手なの?」

「そういうわけじゃないですが、営業部でも飲み会はよくありますから全部は参加できなくて」
 
取引先との懇親会や、営業部の飲み会は仕方がない。
 
営業に交流は欠かせないし、たとえ社内のメンバーだけだとしても、適度なコミュニケーションをとっておくのは大切だ。

「ふーん、でもさっきのは行けばよかったのに。あの中に俺のイチオシ子猫ちゃんがいたのに」

「声をかけみたらどうですか? 太田さんを誘おうかな?って言うのが聞こえましたよ」
 
とくに深い意味のないあの手の誘いは、観賞用としての扱いだ。要はイケメンであれば誰でもいい。

「え? そうなの? 俺でも喜んでくれそう? まぁだけど王子の代わりってのは嫌だな」
 
そう言って彼はニヤリと笑う。
 
倫は「失礼しました」と苦笑した。
 
だから嫌なんだよこいつ、と心の中で毒づきながら。
 
張り合うつもりは微塵もないのに、太田がこ
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