フィクションですよね⁉︎〜妄想女子の初恋事情〜
合点がいってそう言うと、伊東が顔をしかめた。
「違う、そうじゃない。この俺がそんなせこい手を使うか。お前が仕事ができるというのは、前から言ってることだろう。飲み会の時も皆の前でそう言った」
確かにそれはそうだけれど。
「あれは……伊東さんが私に感謝してるふりをして自分をよく見せるために言っているのかと」
「それもなくはない。だけどそれだけじゃなくて、経理の仕事への感謝を形にしたかったのも本当だ。飲み会、あんなに嫌がると思わなかったから。てかお前、嫌だったなら断れよ」
「それは、まぁ、はい」
「だからべつにお世辞じゃない。お前が優秀で、業務上頼りになるのは事実だ。いくらイメージのためとはいえ、俺はそういうところでいい加減なことは言わない。信頼にもかかわるからな。俺は仕事が抜群にできるから、お前に東京クラフトさんの件を任せたんだ」
意外な言葉に楓は目をパチパチさせて彼を見た。あの飲み会の件は、てっきり、伊東のイメージ戦略の駒として使われただけだと思っていた。
それだけじゃなかったのだ、というのと、彼が楓の仕事を知っていて評価していたのだという二重の意味で驚いた。
仕事は一生懸命やっているが、楓は意識して存在感を消しているのに。
「なんだ?」
「いえ……伊東さんって社内の人のことよく見られてるんだなーと思って。私のこと知ってるのって経理部の人くらいだと思ってたので」
「自社の製品を売るのが営業の仕事だけど、自社の強みを知っていないでそれができるわけがない。俺は製品だけじゃなくて各部署の誰がどういう仕事をするのか把握するようにしている」
「……さすがですね」
素直な気持ちが口から出る。
楓のことを有能だと伊東は言ってくれたが、そんなの彼とは次元が違うという気がした。
楓としても仕事は、なるべく完璧を心がけている。でもそれはあくまでも経理の分野の中だけ。全体を見渡して隅々にまで目を配っているのはさすがだというほかない。
楓からの率直な褒め言葉に、伊東が照れたように目を逸らした。
「まぁ外面を完璧にするためだけど」
あくまでも自分のためだと言い切るし、それは正直な気持ちなのだろう。
だとしても。
誰しもができることではない。
「違う、そうじゃない。この俺がそんなせこい手を使うか。お前が仕事ができるというのは、前から言ってることだろう。飲み会の時も皆の前でそう言った」
確かにそれはそうだけれど。
「あれは……伊東さんが私に感謝してるふりをして自分をよく見せるために言っているのかと」
「それもなくはない。だけどそれだけじゃなくて、経理の仕事への感謝を形にしたかったのも本当だ。飲み会、あんなに嫌がると思わなかったから。てかお前、嫌だったなら断れよ」
「それは、まぁ、はい」
「だからべつにお世辞じゃない。お前が優秀で、業務上頼りになるのは事実だ。いくらイメージのためとはいえ、俺はそういうところでいい加減なことは言わない。信頼にもかかわるからな。俺は仕事が抜群にできるから、お前に東京クラフトさんの件を任せたんだ」
意外な言葉に楓は目をパチパチさせて彼を見た。あの飲み会の件は、てっきり、伊東のイメージ戦略の駒として使われただけだと思っていた。
それだけじゃなかったのだ、というのと、彼が楓の仕事を知っていて評価していたのだという二重の意味で驚いた。
仕事は一生懸命やっているが、楓は意識して存在感を消しているのに。
「なんだ?」
「いえ……伊東さんって社内の人のことよく見られてるんだなーと思って。私のこと知ってるのって経理部の人くらいだと思ってたので」
「自社の製品を売るのが営業の仕事だけど、自社の強みを知っていないでそれができるわけがない。俺は製品だけじゃなくて各部署の誰がどういう仕事をするのか把握するようにしている」
「……さすがですね」
素直な気持ちが口から出る。
楓のことを有能だと伊東は言ってくれたが、そんなの彼とは次元が違うという気がした。
楓としても仕事は、なるべく完璧を心がけている。でもそれはあくまでも経理の分野の中だけ。全体を見渡して隅々にまで目を配っているのはさすがだというほかない。
楓からの率直な褒め言葉に、伊東が照れたように目を逸らした。
「まぁ外面を完璧にするためだけど」
あくまでも自分のためだと言い切るし、それは正直な気持ちなのだろう。
だとしても。
誰しもができることではない。