皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
その瞳には迷いが一切なかった。

私の心臓はますます速く鼓動を打ち、幼い日々の記憶と、今の現実が交錯していった。

「私、もう一度考えるわ。」

「……ああ、そうしてみるといい。いい返事を待っているよ。」

ルカはそう言って、私の手をそっと離した。

あの温もりが離れていくのを感じた瞬間、胸の奥に小さな穴が開いたような寂しさが広がる。

彼は振り返らずに、静かに応接室を後にした。

入れ替わるように、お父様が部屋へ入ってくる。

「ルカは、何だって?」

「……皇太子妃を降りて、俺と結婚しないかって。」

「えっ?」

お父様は、目を丸くして私を見た。その表情には驚きと、少しの戸惑いが混じっている。

「降りたいのか?皇太子妃を。」

答えが出なかった。

アレシオ殿下との日々は、確かに私を幸せにしてくれた。
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