皇太子妃を公募で決めるなんて聞いてません~見返す為に応募したのに皇太子殿下に心奪われてしまいました~
空気は凍りついたようで、誰一人、物音ひとつ立てようとしない。

殿下は静かに、けれど誇らしげに言った。

「この言葉を聞いた時、私は……恥ずかしながら、胸が熱くなった。私が見落としていた“本質”を、この答案が思い出させてくれた。」

そして殿下の瞳が、ある一点にまっすぐ向けられた。

その視線の先にいたのは、私ではなかった。

「エミリア・ロザリンド伯爵令嬢。君の回答だ。」

空気が揺れるように、周囲から小さなどよめきが起こった。

私の隣でエミリアが静かに立ち上がる。背筋は伸び、凛としたその姿は、どこか神々しさすら感じさせた。

「この回答は、他の令嬢にとっては模範的とは言えないかもしれない。」

そう語りながら、殿下はほんのりと微笑み、言葉を続ける。

「だが……私の心には、十分すぎるほどに届いた。いや、痛いほどに。」

静かな声。

それなのに、その言葉には圧倒的な温度が宿っていた。
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