そのお悩み、私たちの能力で解決します!
ひとまずカップケーキ作りに必要な、ホットケーキミックスや卵、牛乳、果物、焼けたカップケーキをデコレーションする材料などを学校の近くのスーパーで買いました。
「椿妃ちゃん、重くない?大丈夫?私も持つよ!」
両手にもりもりとビニール袋を持った私を、優しい桜彩ちゃんは心配してくださいます。
「これくらい大丈夫です!私、力には自信がありますから!」
少し恥ずかしいと思っていた私の怪力の能力。
桜彩ちゃんがかっこいいと言ってくださったその日から、私はこの能力が少し好きになりました。
こうして桜彩ちゃんの役にも立てるなら、どんどん使っていこうとさえ思います。
「さぁ、早く戻りましょう!」
私たちは気合十分で家庭科室へと向かいました。
しかし、カップケーキ作りは難航しました。
レシピ通りに作っているのに、何故か櫻井さんのカップケーキだけ、うまくふくらまなかったり、逆にふくらみすぎてカップから溢れてしまったりと、いい形に仕上がらなかったのです。
「なんだかうまくいかないねぇ……?」
桜彩ちゃんが首をひねります。
櫻井さんが少し落ち込んだように、下を向いてしまいました。
「やっぱり、私じゃできないのかな……。ちゃんとレシピ通りに作ってるはずなのに、どうしてちゃんと焼けないんだろう……」
今にも泣き出しそうな櫻井さんに、私はなんと声をかけていいのかわかりませんでした。
どうして櫻井さんのカップケーキだけちゃんと焼けないんだろう……?
なにか解決方法はないのか、そればかり考えていました。
そこに桜彩ちゃんが明るく声をかけます。
「櫻井さん、顔を上げて!」
「え?」
櫻井さんは桜彩ちゃんの声に弾かれたように顔を上げます。
「好きなひとに食べてほしいんでしょ!だったらそんな暗い顔はだめだよ!上手くできなくてもいい。ただ、櫻井さんが気持ちを込めて、楽しく作れば、きっと相手の子にも気持ちは伝わる。だからもう少し一緒にがんばってみよう!私たちがちゃんと見てるから!」
桜彩ちゃんはにこりと明るく笑います。
その言葉に感動したように、櫻井さんは「はい!」と笑顔になりました。
「よぉし!どんどん作ろう!」
桜彩ちゃんのかけ声とともに、櫻井さんがまた調理をはじめます。
その表情からは、さっきの悲しそうな色は消えて、楽しもうという気持ちが読み取れました。
さすがだなぁ、桜彩ちゃん。
櫻井さんと楽しそうにカップケーキを焼く桜彩ちゃんを見て、私は胸がきゅんとしました。
桜彩ちゃんは太陽みたいに明るいひとです。
どんなひとの心も明るく照らしてくれます。
私は、桜彩ちゃんに助けられた恩義から、桜彩ちゃんを好きになりました。
でも、桜彩ちゃんと接していくたび、桜彩ちゃんの明るく前向きな姿勢や、誰かの悩みを真剣に聞いてなんとかしてあげたいと強く思う優しい心に、ますます惹かれていきました。
ああ、やっぱりとても大好きだなぁ、って、目の前の桜彩ちゃんを見て思いました。
私も、桜彩ちゃんみたいになりたい。
強く、前向きな心で、悩んでいるひとの力になりたい。
私はふたりの作業を見て言います。
「少しカップに対して量が多いのかもしれません。だから溢れたりして、形が悪くなってしまうのかも。もう少し少なくしてみましょう」
私の言葉に「はい!」と元気よく返事をする櫻井さん。
櫻井さんの気持ちが、その好きなひとに届きますようにと、思わずにはいられませんでした。