売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
あれだけ騒がしかった男たちは、ただ唖然と立ち尽くしていた。

クライブは視線を一つも返さず、静かにその場を後にする。

「……ああ、クライブ……」

思わず、名前がこぼれた。

けれど彼は、私の顔を見ることなく言った。

「何も言うな。」

その声に、不思議と泣きたくなった。

外へ出ると、夜の冷たい風が頬を撫でた。

すぐに用意されていた馬車が私たちを迎える。

クライブはそっと私を中に乗せると、自分の上着を脱ぎ、私の肩にかけてくれた。

「……よく、頑張ったな」

その一言が、胸の奥にじんと沁みた。

ああ……私は、救われたんだ。

たとえ買われた身だったとしても、この人の腕の中にいることが、今は何よりも安堵だった。

私はそっと、彼の手に触れてささやく。

「ねえ……頑張ったご褒美に──キスを、ちょうだい。」

クライブは少し驚いたように私を見つめた。

けれど次の瞬間、無言で顔を近づけてきた。

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