売られた令嬢、冷たい旦那様に溺愛されてます
「……あの……腕、痛くない?」

ずっと同じ姿勢で抱きしめてくれているクライブ。

私の頭が乗っているその腕に、しびれや痛みはないのだろうか。

すると、クライブは微笑を浮かべるようにして──私の額にそっとキスを落とした。

「……その痛みさえ、愛おしいよ。」

小さな声だったけれど、しっかりと胸に届いた。

ああ、なんて優しいの。

あのサロンで、冷酷な仮面を被っていた彼と同じ人だなんて、信じられない。

「……初夜の時くらい、甘えてくれ。」

その言葉に、私はこくんと小さく頷いた。

「……うん。」

クライブの腕が、すこしだけ力を込めて私を引き寄せる。

そして、ぽつりと呟いた。

「君の……初めての痛み。──たぶん、俺……ずっと忘れないと思う。」

その声には、後悔でも、誇りでもない。

ただ、心から私のことを思ってくれている、静かな重みがあった。

私は、そっと目を閉じた。

クライブの胸に耳を当てると、やがて、静かな寝息が聞こえてきた。

穏やかで、あたたかくて、まるで私の鼓動と同じリズムで眠っているようだった。
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