喜びをあなたと一緒に

プロローグ

カラン。カラーン。

鐘の音が来客を知らせる。
「いらっしゃいませ。」と、笑顔で対応する。

うちのカフェによく来てくれる常連さんだった。
「いつもの、お願いできる?」
そう言って、50代ぐらいの常連の男性は、いつもの席に座った。

キッチンから、彼がコーヒーを淹れる音が聞えてくる。
私は、その音を聞くのが好きだ。

カラン。カラーン。

もう一度、鐘の音が鳴った。
今度は、あかりちゃんとそのママだった。

「あ、優里ちゃん。今日はね、あかり、向日葵の絵を描きたいの。」
まだ幼い女の子が、舌っ足らずにしゃべるのが微笑ましい。
「いいね!描いてみよっか。」
「優里さん。今日もよろしくお願いします。」
「はい。」

あかりちゃんのママにそう答えると、あかりちゃんと一緒に2階に上がった。
< 1 / 53 >

この作品をシェア

pagetop