喜びをあなたと一緒に
暖かくなってきたとはいえ、朝晩はまだまだ冷えるので、ブラウスの上にトレンチコートを羽織って家を出た。

春の風は強く、トレンチコートの裾を引っ張られているようだ。
風が、会社に行くのを邪魔しているような気さえしてくる。

最寄りの駅から、都心方面の電車に30分程乗り、少し歩いたところに、私の務める会社がある。

4階建てビルの2階に入居しており、セキュリティーカードをかざして中に入る。

既に何人かが出社しており、作業を進めていた。
「おはようございます。」気まずさから声が小さくなる。
やや間があって、「おはようございます。」と、これまた小さな声で返ってきた。

人間関係は悪くない。

ただ、どう接したらいいのかが分からなくなってしまっただけなのだ。
それは多分、私だけではなく、お互いにそうなのだと思う。

だって、つい2週間程前までは、変に気兼ねすることなく、切磋琢磨して仕事に取り組む仲間だったのだから――。
< 4 / 53 >

この作品をシェア

pagetop