喜びをあなたと一緒に
山本 咲希(やまもと さき)とは、美大で知り合った。

「いっぱい、いっぱい描いて、将来個展を開くんだ!」
咲希は、事ある毎にそう口にしていた。
そのときの咲希の目は、キラキラと輝いてた。

絵を描くことが好きという理由だけで美大に入学した私には、明確な夢や目標はなく、やりたいことが決まっている咲希が眩しかった。

咲希の絵は、個性的なものが多く、枠にとらわれない作風が魅力だった。
対して私は、基礎は良く出来ているが、個性が足りないと言われていた。

咲希は、コンプレックスを刺激する存在になり得たが、そうはならなかった。
私の絵をべた褒めしてきたからだ。

咲希から見れば、私の絵には感情が乗っているらしい。
ネガティブな感情もポジティブな感情も、全て絵に現れている。それが、個性だと言っていた。
逆に、咲希はネガティブになることがあまりないから、ネガティブを表現することが難しいと悩んでいた。

ネガティブになりがちな私と、ポジティブな咲希。
凸凹な私たちは、共同制作を通して仲良くなり、今でも週に1~2回は連絡を取るほどの仲になった。
< 9 / 51 >

この作品をシェア

pagetop