小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第73話 ゆるんだ鳥籠(5/6)


 ゼフォンは目を閉じ、椅子の背にもたれた。
(カナリアが錯乱していたかどうかなど……もはや重要ではない。
カナリアは“間違った相手”に情けをかけ、掟を破っただけだ。
――だから予が正しかったのは、変わらぬ)
 かつてシャオレイにぶつけた言葉が、ゼフォンへよみがえる。

『予は幼子《おさなご》ではない!
女子《おなご》に守られたいとは思わぬ!』

(妃に侮辱されたのは事実。
だが、女子《おなご》の戯れ言に過敏になりすぎた。
まるで幼子《おさなご》のように怒って……。
ヤン妃の言葉は、予を想うがゆえ。
――そうでなければあんな歌詞を書くはずがない。
ならば……あのとき拒絶した予の方が、浅はかだったのだ。
そんな器量で、国など治められるものか)

 静けさの中、遠くの鳥のさえずりが、ゼフォンに聴こえる。
 ゼフォンはしばらく耳を澄ませていたが、やがてその鳴き声は遠ざかっていった。
 そっと目を開け、ゼフォンは虚空を見つめる。

(そなたは優しくて純粋だから、ビン・ユエンに利用されただけだ。
画策したのも、あの男にそそのかされただけ……。
そして、そなたが逃げたのは――鳥籠がゆるかったからだ。
もっと強固なものにしなかった、予の責任だ)

 ゼフォンは、密偵たちを呼びつけて命じた。
「ビン・ユエンとヤン妃の行方を捜せ。
加えて、昨夜から今朝にかけて、あやつらの周囲で不審な動きがなかったか――あまさず探れ」

 ゼフォンが命じると、彼らはすぐさま行動を開始した。

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