小鳥の爪―転生寵姫は2番目の恋に落ちる―
第73話 ゆるんだ鳥籠(4/6)




 ゼフォンは、逃亡したシャオレイたちの手がかりを探すために、尚宮局《しょうぐうきょく※》にいた。 [※書類や物品などを管理する部署]

 そこには、瑶吟宮から回収された、シャオレイの私物が保管されている。

 だが、手がかりは何も見つからなかった。ゼフォンはため息をつき、椅子に腰かけた。

 ふと、何の変哲もない紙束にゼフォンの目が留まった。ゼフォンは、それを何気なく手に取った。

 その中には、シャオレイの書いた歌詞があった。
 それは、去年の七夕の宴の準備中に、シャオレイが無意識に綴った恋の歌。うっかりフェイリンへ見せてしまい、彼に眉をひそめられていた。

(ビン・ユエンを想った歌か……?)
 一瞬、ゼフォンの嫉妬が燃え上がった。だが、読んでいるうちにゼフォンは気づいた。
(これは――予に、向けられたものだ)

『ひとり枝で さえずり 待ちぼうけ
ついに 雲割れ 龍降りぬ
いざ 舞の続きを 永遠に
鱗《うろこ》ひとひら 袖に秘め
縁《えにし》の糸に』

 やっと再会できたゼフォンとの夜伽の記憶をなぞる、生まれた甘い歌詞。
 細く、かすかな筆跡。飾らない竹紙《ちくし》にさらりと書かれた歌には、偽りはなかった。
 あったのは、ただ恋に浮かれる女の悦びだった。

 ひとつひとつの文字に宿る熱が、ゼフォンの指先に伝わった。

 シャオレイが本当に愛していた者は誰か――答えは、もう明白だった。

 ゼフォンは息をついた。
(カナリアを処分したのは、正しき裁き……。
冷宮へ落としたとき、すべて終わったと思っていた。
――カナリア……予が授けた名だ。
剥ぎ取ったつもりだったのに……)
 その名を想うだけで、ゼフォンの耳にシャオレイの歌声がよみがえる。
 シャオレイの手を振る仕草、上目づかい、夜更けに交わしたささやき――すべてがゼフォンの記憶に焼きついていた。
 ゼフォンはやっと、自身の未練に気づいた。
(予はまだ……そなたを手放せていなかったのか)

< 367 / 492 >

この作品をシェア

pagetop