仲良し家族は嘘だらけ⁉
1 御影家の秘密

御影道場

 私の家は由緒正しい柔道教室をやっている。名前は御影(みかげ)道場。

 もちろん娘の私もその生徒の一人だ。

「押忍!」

 朝から道場は大きな声でにぎわっている。

 それを聞きながら、私は鏡の前でふうと息をついた。

 昨日の練習の時、フォームが気になった。動きも無駄があった気がする。

 次の試合までに直しておかなきゃ。

 頭の中で昨日のことを思い出しながら動きを繰り返していく。

 私は御影みく。近くの学校に通う中学一年生で、師範であるお父さんからは期待のホープなんて言われている。練習に励む私を、家族全員応援してくれてるんだ。

 そしてなんといっても、今日は私の誕生日! きっとみんな祝ってくれるはずだ。

 この後、家族みんなで集まることになってるんだ。お父さんが、話があるって言ってたし、もしかしたら大事な話かも。見当もつかないけど、柔道の試合とかかな?

 とにかく、今日は大切な一日になりそう!

 と、ぽんと肩をたたかれた感覚があった。

「十三歳、おめでとう。誕生日だってのに、みくは熱心だな」

 振り向くと、私のお兄ちゃん、(りつ)兄ちゃんが立っている。二歳上の中学三年生で、同じくこの道場の生徒なんだ。

 私はプクッと頬を膨らませた。

「別にいいでしょ、上手くなるには練習しないと」

 律兄ちゃんはふっと微笑んだかと思うと、大きな手でわしっと私の頭をつかんだ。

「まあ、そんなみくだから自慢の妹なんだけどなあ」

 そのまま、がしがしっと髪の毛をぐちゃぐちゃにされる。

 お兄ちゃんってば、力が強いんだ。

 頭がぐわんぐわんって揺れる。

「……ずっと妹でいてくれたらいいんだけどな」

 お兄ちゃんの口が動いたけれど、私にはよく聞き取れなかった。
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