結婚の決め手は焦げた玉子焼き!?黒豹御曹司は愛する秘書を逃がさない
「どうかしたか?」
「なんでもないです」
「なんでもないって顔じゃないぞ」
 アイスでも買ってやろうかと言われた沙紀は、完全な子ども扱いに笑ってしまった。

「バニラがいいです」
「わかった」
 本当にバニラアイスを買い物かごに入れる暁良の姿が似合わなさすぎて益々笑ってしまう。

「笑いすぎだ」
 コツンと軽くおでこに指が触れる感覚も新鮮すぎる。

「アイスが溶けるから帰るぞ」
 手を繋ぎながらレジへと誘導された沙紀は、大きな暁良の手を握り返しながら「はい」と答えた。


 普段の会食と比べると質素すぎて恥ずかしい庶民料理なのに、暁良はおいしいと何度も言いながら食べてくれた。
 お世辞だとわかっているけれど、やっぱりおいしいと言われるとうれしい。

「好きだ」
 玉子焼きを食べながらドキッとする言葉は言わないで!
 私のことが好きだなんて勘違いはしないけれど!

「これから夜の会食は全部断ってくれ」
「えぇっ?」
「沙紀と食べたい」
「夏目さんが怒りますよ?」
 沙紀が真面目に回答すると、暁良は溜息をつく。

「……できるだけ沙紀の飯が食いたい」
「私のご飯でよければいつでも」
 沙紀が微笑むと、暁良は「明日も玉子焼きが食べたい」と笑った。

    ◇

 沙紀が住んでいたマンションを見上げながら大輝は眉間に皺を寄せた。
 沙紀の部屋は302号室。
 今までこんな時間に帰っていないことなんてなかったのに、今日も電気がついていない。
 昨日も、一昨日もだ。
 秘書になってから毎日帰りが遅いが、それだけCEOにべったりということなのだろう。

「ごくろーさん」
 沙紀とヨリを戻し、沙紀からCEOに俺の名前を覚えてもらえば、いっきに昇格のチャンスだ。
 
 この前、二人で街を歩いていたのは、アメリカ帰りのCEOに街を案内していただけだろう。
 俺はちゃんとわかっているから心配するな。
 嫉妬とかしないから安心しろよ。
 大輝は鞄から合鍵を出すと、マンションのエントランスを通過した。
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