結婚の決め手は焦げた玉子焼き!?黒豹御曹司は愛する秘書を逃がさない
 おいしすぎて、つい食べ過ぎてしまった。
 こんなにおいしいお寿司を知ってしまったら、スーパーでパックのお寿司が買えなくなりそうだ。
 庶民の感覚がバグる!
 こんな生活を一年もするなんて危険すぎる!

「家で映画でも見るか」
「はい!」
 差し出された手が温かいことも、彫刻のような顔が笑うと優しく見えることも、今だけ特別だとしっかり覚えておかなくては。
 
「暁良さん、今日はありがとうございました」
 少しは大輝に仕返しできただろうか?
 多少でもショックを受けていたらうれしいけれど。
 沙紀は暁良と手を繋いで駅へ。
 電車がまったく似合わない暁良と一緒に沙紀はマンションへ戻った。

     ◇

「あれってもしかして工藤ちゃん?」
 沙紀が駅に入っていく姿に先に気づいたのは、一緒に合コンに参加していた佐藤だった。

「一緒にいるのはうちのCEO? 土曜も仕事? うわ、秘書って大変なんだな」
「あ、あぁ。そうなんだ。帰りも遅いしさ」
 佐藤には沙紀と別れたことは言っていない。
 もともと心愛とは、ちょっと遊んで別れるつもりだったから。
 
「CEOって婚約者がいるらしいし、工藤ちゃんは真面目で浮気の心配がないからいいよな」
「……え? 婚約者?」
「株主総会で一年後には婚約者と結婚するって言っていたらしいぞ」
 部長から聞いたと言う佐藤の言葉に、大輝は目を見開いた。

「世襲で、アメリカ帰り。文句をつけるところなんてないよな」
 婚約者もきっと美人だから、うらやましいよなと佐藤は笑う。
 
 街で会った時は、相手はホストだと思った。
 まるでカップルかのように高級レストランに入っていった。
 そして今日は装飾品店で指輪を選んでいたけれど。
 
 ……浮気?
 もしかして婚約者がいるって沙紀は知らずに……?

「俺が助けてやらないと」
 あいつは俺にフラれたショックで周りが良く見えなくなっているんだ。
 心愛と今すぐ別れて、沙紀を守ってやらないと。
 
「俺、しばらく合コンやめるわ」
「は?」
「ごめんな」
 今日も二次会に行かずに帰ると、大輝は佐藤に手を上げた。

 急いで駅の中に向かい、沙紀の姿を探したがもうどこにもいなかった。
 会社でもなかなか話す機会はないし、メールや電話も拒否されている。
 でも沙紀と話さないと。

 大輝はスマートフォンを取り出すと、心愛に「別れよう」とメッセージを送信した。
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