蒼銀の花嫁 〜捨てられ姫は神獣の番〜
変わらぬ美しさ。
けれどその瞳は、やはりどこまでも冷ややかだった。
「……姉さま」
「そんな他人行儀な呼び方。寂しいわ、セレナ」
まるで旧友に語りかけるような、なめらかで優雅な声。
だがその言葉には、柔らかな毒が滲んでいた。
「番妃として都へ戻ってくるなんて……よかったわね。本当に、よかった」
言葉とは裏腹に、祝福の色はなかった。
それどころか、“よくそこまで来られたわね”という皮肉が、痛いほどに伝わってくる。
「……私は、アグレイスさまの番妃として、まっすぐ歩いていきます。誰の許しがなくとも、それを選びました」
セレナははっきりと言った。
怯えも、ためらいも、今はなかった。
リディアの唇が、ほんの少しだけ吊り上がった。
「……随分と、強くなったのね。――おもしろいわ」
その笑みに、周囲の貴族たちがざわついた。
リディアが“本気で”何かを考え始めた――その予兆を、誰もが感じ取ったのだった。