親友のキミと、あと1ミリの恋
「美波っ!!」
強い腕が、私を後ろから抱きとめた。
「大丈夫か!?」
耳元で、焦ったような晴人の声が響く。
彼の体に抱きとめられ、私は何とか転落を免れたようだ。
晴人の腕の中にすっぽりと収まり、少し汗ばんだシャツの匂いと、彼の心臓の激しい鼓動が伝わってくる。
「はる……っ」
驚きと安堵で、うまく息ができない……。
「美波、どこか打ったりしてないか?」
晴人が私を離すと、私はゆっくりと体勢を立て直した。
彼の顔を見ると、眉間に深い皺が寄り、怒っているような、それでいて怯えているような複雑な表情をしていた。
「無茶するなよ、美波! お前が怪我したら、俺がどれだけ……!」
彼はそう言いかけて、言葉を詰まらせた。
その言葉の続きを言えない自分に、晴人自身も驚いているようだった。
ふと見ると、私の腕についた擦り傷を心配そうに見て、優しく触れている。
晴人の手が、かすかに震えているのが分かった。
もしかして……? もしかして、晴人が私だけに見せる、この焦燥は……。