神様はもういない
「ねえ、本当だよ? 湊、本当に死んじゃってるんだよ」
「え、うん。だから納得してるって」
「いや、違うよね。納得なんて全然してないでしょ。受け入れられてないんじゃないの?」
「はあ? なんでそうなるんだよ。俺はちゃんと、自分が死んだって受け入れて——」
「私ね、彼氏がいるの」
ぴたり、と湊の呼吸音が止まったように、この場に静寂が訪れた。いや、実際幽霊なんだからもう息はしていないのだろうけれど、この時の空気感を表現するのにはこれがぴったりだった。
「彼氏……それ、だれ?」
「新しい会社の同僚。一つ下で、真面目で優しいの。二週間前から付き合い始めたばかりよ」
「え、でもさ。この一週間、あゆり、全然彼氏を家に呼んだり電話したりしてなかったじゃん。付き合いたてなのに? 俺たちが付き合い出した頃って、毎日お互いの家を行ったり来たりしてなかった?」
「それはっ……!」
痛いところを突かれて唇を噛み締める。
そうだよ。湊との交際と、雅也との交際に温度差があることなんて、とっくの昔に気づいていた。まだ交際を始めて二週間だけれど、ひしひしと感じるのだ。湊に対する気持ちは真っ赤な炎みたいにメラメラ燃えていたのに、雅也への気持ちはもっと穏やかだ。付き合いたてでベタベタしなくても平気なのも、湊の時より気持ちが乗ってないからだって、気づいて——……。
「だめじゃん。恋人なら、もっと一緒にいないと。今の彼氏ともっと仲良くしなよ」
鼻で笑うように斜め上からアドバイスをしてくる湊に、沸々と怒りが込み上げてきたのはこの時だ。
「え、うん。だから納得してるって」
「いや、違うよね。納得なんて全然してないでしょ。受け入れられてないんじゃないの?」
「はあ? なんでそうなるんだよ。俺はちゃんと、自分が死んだって受け入れて——」
「私ね、彼氏がいるの」
ぴたり、と湊の呼吸音が止まったように、この場に静寂が訪れた。いや、実際幽霊なんだからもう息はしていないのだろうけれど、この時の空気感を表現するのにはこれがぴったりだった。
「彼氏……それ、だれ?」
「新しい会社の同僚。一つ下で、真面目で優しいの。二週間前から付き合い始めたばかりよ」
「え、でもさ。この一週間、あゆり、全然彼氏を家に呼んだり電話したりしてなかったじゃん。付き合いたてなのに? 俺たちが付き合い出した頃って、毎日お互いの家を行ったり来たりしてなかった?」
「それはっ……!」
痛いところを突かれて唇を噛み締める。
そうだよ。湊との交際と、雅也との交際に温度差があることなんて、とっくの昔に気づいていた。まだ交際を始めて二週間だけれど、ひしひしと感じるのだ。湊に対する気持ちは真っ赤な炎みたいにメラメラ燃えていたのに、雅也への気持ちはもっと穏やかだ。付き合いたてでベタベタしなくても平気なのも、湊の時より気持ちが乗ってないからだって、気づいて——……。
「だめじゃん。恋人なら、もっと一緒にいないと。今の彼氏ともっと仲良くしなよ」
鼻で笑うように斜め上からアドバイスをしてくる湊に、沸々と怒りが込み上げてきたのはこの時だ。