神様はもういない
 さっきよりも早く、手を動かしてお惣菜をぱくぱくと食べる。今、心配してくれるひとはこの家にいない。自分のことは自分で慰めるしかない。いちばん有効なのはやっぱり忙しくすることだ。
 ばばばっと食事を終えると必要最低限の洗い物をして、ふう、と一息つく間もなく、ダイニングテーブルの上でノートパソコンを開いた。
 仕事の続きをしよう。
 会社でやっていた仕事のデータは常に持ち歩くようにしている。もちろん、紛失しないように細心の注意を払っている。職場と自宅を往復するだけの生活だから、そのあたりはあまり心配していなかった。
 それよりも、滞っている仕事を前に進めるほうが大切だ。
 仕事をしていれば余計なことを考えなくて済む。
 だから家で持ち帰りの仕事があるからと憂鬱になることはなかった。
 上司の期待に応えられないほうがずっと辛い。せっかくやりたい仕事に就くことができたのだ。最初から難しい案件を引き受けて不安な気持ちはあるけれど、私に任せてくれた上司の気持ちを無駄にしたくない。期待に応えたい。
 その一心で、デザインと向き合う。デザインソフトを開き、画面と睨めっこ。雅也との仕事上の過去のメッセージを漁り、どんなデザインがいいのか、ひたすら頭の中で練って、実際に手を動かした。いくつもいくつもアイデアを出し、その度に新しいファイルで違うデザインをつくった。この中のどれかが先方のお気に召してくれたらいいと祈りながら。
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