契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~
 数日後、さっちゃんと深雪を夜ご飯に誘った。


「元上司には、近いうちに内容証明を送ることになったよ。たいした刑にはならないだろうけど、こうして訴えることに意味があるはずだから」
「そう。セクハラやパワハラは刑が軽いのが悔しいけど、それでもやる方がいいわ。泣き寝入りなんて悔しいじゃない。本当なら、私が海にでも沈めてやりたいけどね」
「私はぶん殴ってやりたいくらいムカついてるけど! そういうわけにはいかないから、ちょっとでも重い罪になるように祈っておくね」


 物騒なことを口にしたふたりに、小さく噴き出しつつもお礼を言う。
 安堵の笑みを返され、私も同じような顔になった。


 そのあとは、他愛のない内容や深雪の仕事に関する相談事など、話題がどんどん広がっていった。
 三人揃って会うのは久しぶりだから、食事とともに会話も弾む。
 そんな中、不意にさっちゃんが優しい眼差しを私に向けた。


「那湖、うちの会社を継ぐ気はある?」


 直後に投げかけられた問いに、私は目を真ん丸にしてしまった。


「えっ……?」
「一人娘の深雪はこの通りフラワーデザイナーとして独立する予定だし、今後もこの仕事で生きていくと思う。もし違う道に行くことになったも、まあうちで働くことはないわ。これは那湖もわかってるでしょ」


 思考が置いていかれそうになりつつも、さっちゃんに相槌を打つ。
 深雪の仕事はもとより、彼女はそもそも家政婦業に興味はなく、会社を継がない話は暗黙の了解になっている。
 だからといって、私にこんなことを尋ねるさっちゃんの真意を測りかねた。

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