契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ～ママになっても愛し尽くされています～

「お待たせいたしました」


　程なくしてやってきたのは、社長と専務、顧問弁護士、そして中郷だ。
　中郷は俺を見るなり目を大きく見開き、顔をサッと逸らした。


「本日はお時間をいただき、ありがとうございます。『株式会社アリタ工業』の顧問弁護士の櫻庭です。こちらの有田さんのことは、詳しいご紹介は必要ないでしょう」


　俺に続いて、この場にいる面々が簡単に自己紹介をしていく。


　アリタ工業は、ＤＤ機器の取引先で部品を仕入れている会社だ。
　しかし、ここ数年で部品の質がどんどん悪くなり、アリタ工業は自社の納品先からクレームを受けていた。
　有田さんが担当者に訴えても、状況は変わらない。
　そういったことが重なって経営難に陥り、知人を介してうちの事務所にやってきた——というわけだ。


　当初、担当弁護士は他の者になる予定だったが、ＤＤ機器の名前を聞いてボスに直談判した。
　その結果、アリタ工業に関わるＤＤ機器の担当者が中郷だとわかったのだ。


「ご相談内容は事前にお伝えした通りです。貴社の担当者の仕事によって、アリタ工業は多額の被害を受けました。今回はその被害額と慰謝料に関するお話をさせていただきたい。その上で、今後の契約を見直しをさせていただきます」


　俺の言葉に、ＤＤ機器の人間たちの顔が青ざめていく。
『契約の見直し』が『契約を切りたい』であることを理解したのだろう。


　取引先の詳細まではわからないが、ＤＤ機器にとってアリタ工業は大口の相手だ。
　中郷は表面上は受けがいいのか、調べた限りではそれなりの契約を取ってきたり大口の契約を担当したりしているようだった。
　しかし、その仕事内容はずさんなもので、下請けから納品された部品の数パーセントに劣化や不具合があり、それがアリタ工業へのクレームと被害に繋がった。