契約外の初夜で、女嫌い弁護士は独占愛を解き放つ~ママになっても愛し尽くされています~
 そんな中、中郷に内容証明を送った。
 彼は、既婚者でありながら那湖を気に入り、業務とは関係のないことで呼び出したり必要以上に身体的に接触したりと、目に余る行為があったのだという。
 それだけではなく、不要なメッセージを繰り返し送ったり仕事帰りに那湖の自宅も最寄駅で待ち伏せしたりと、ストーカー行為もあった。


 ふたりに不倫疑惑が持ち上がって、そのせいで会社に居場所がなくなった彼女が退職したあとも、中郷は懲りもせず接触を図っていたそうだ。
 那湖の退職して彼が再び連絡してくるようになったのは、離婚が成立した頃。
 中郷を調べて知ったことだが、彼は離婚を機に彼女を手に入れようとしたらしい。


 あまりの身勝手さと不快感に怒りが止まらなかったが、まさか感情に任せて解決するわけにはいかない。
 ちょうどその頃、仕事でDD機器に関わることになったこともあり、俺は那湖の意向を確認した上で弁護士として中郷を叩き潰すことにした。


 証拠としては弱いものも多いが、元妻である紘奈さんを始め、証言も取れている。
 重罪には問えなくても、社会的な制裁は加えられるはずだ。
 その第一歩が、まさに今日なのだ。


「では、行きましょうか」
「はい。櫻庭先生、よろしくお願いいたします」


 DD機器に着いた俺は、クライアント有田(ありた)の有田さんと受付で声をかける。
 すでにアポイントは取っていたため、スムーズに会議室に案内された。
 社内はどこか騒がしく、所々で「中郷課長」と口にしている者も見かけた。
 俺の目論見通り、事が進んでいるのだろう。

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